谷口慎治
谷口慎治

ChatGPTに「もっと具体的に」と伝えても、思うような答えが返ってこない…そんな経験はありませんか?本記事では、AIに伝わる指示の型をわかりやすく整理しています。目次を見て必要なところから読んでみてください。

なぜ「具体的に教えて」がChatGPTに通じないのか?

「ChatGPTにうまく伝わらない」と感じている方の多くが直面しているのが、「具体的に教えて」が通じない問題です。一見シンプルな指示のように見えて、AIにとっては曖昧なままのことが少なくありません。この章では、その背景にある“人とAIの思考構造の違い”と、“具体性の定義のズレ”を整理します。

人間とAIの「認識のズレ」とは?

人間は、文脈を“行間”から自然に読み取る力を持っています。話し相手の表情や前後の会話、関係性から「きっとこういうことを言いたいんだな」と汲み取れる。
ですが、ChatGPTのようなAIは、その“行間”を自動で補完することができません。あくまで「言語情報として明示されたデータ」を元に処理しています。

たとえば、

  • 「この資料、もっと見やすくして」
  • 「キャッチーに直して」
  • 「もう少しプロっぽく」

このような表現は、人間同士ならなんとなく通じるかもしれませんが、ChatGPTにとっては「どこを」「どういう基準で」「どう直せばよいか」が定義されていないため、曖昧なままになります。

AIは“賢いが融通が効かない”という特性があるため、意図が曖昧だと処理しやすいパターンや過去の平均的なケースで返してくる傾向があります。
つまり、ユーザーが「なんで分からないの?」と思っているとき、AI側は「どう答えていいか分からない」と感じているわけです。

このズレを埋めるには、“AIが得意な受け取り方”を理解する必要があります。

「具体的」とは誰にとっての具体性か?

「もっと具体的に」と言ったときに、多くの人が見落とすのが、その“具体性”が誰にとってのものか、という視点です。

例えば、「旅行プランを考えて」と言って「観光地をいくつか出すだけで終わった」というケース。
このときユーザーは「交通手段、予算、宿泊先、滞在時間」などを含めた提案を期待していた。でも、AIは「とりあえず名所を並べればいいかな」と判断してしまう。
ここにあるのが、「具体性の粒度の違い」です。

ポイントは以下の3点です。

具体性の主語を明示すること
→ 自分が“何を知りたいか”を前提にする

ChatGPTが理解できる構造で伝えること
→ 箇条書きや項目分けが効果的

「具体的に」と言う前に、なにが“足りていない”のかを明示すること
→ 「感情面が足りない」「データが少ない」「例が欲しい」など

つまり、「具体的にして」という言葉の中には、主観が入りすぎているということです。
AIに期待する“具体性”は、人間側が補ってあげないと、うまく機能しません。


以上のように、「具体的に教えて」がChatGPTに通じないのは、AIの認知構造と、ユーザーの期待する“具体性の解像度”にズレがあるからです。このズレを理解しておくだけで、AIとのやり取りのストレスは格段に減らせます。

次の章では、ChatGPTが理解しやすい説明の型と、実際のテンプレート例を紹介していきます。

ChatGPTが理解しやすい説明の特徴とは?

ChatGPTをうまく使いこなすためには、「AIにとってわかりやすい説明の型」を理解することが重要です。人間同士の感覚では通じる表現も、AIにとっては抽象的すぎて意図が読み取れないことがよくあります。この章では、AIが処理しやすい情報構造と、避けるべきNG指示、そして具体的な文の組み立て方を解説します。

ChatGPTが得意な情報処理の前提

ChatGPTは、「前提」「条件」「出力形式」といった構造が整理された情報を読み取るのが得意です。
これはAIがトークン単位(単語や意味のまとまり)で文章を分解し、パターンに基づいて応答を生成しているからです。

たとえば、

  • 「Aの条件下で、Bという目的に沿って、Cの形式でまとめて」

このようなフレーム化された指示であれば、ChatGPTは驚くほど正確に応えてくれます。

逆に、文脈が曖昧なままだと「この人は何を求めているのか?」が判断できず、無難な応答に終わるリスクが高まります。

つまり、ChatGPTを“意図をくみ取る存在”と考えるのではなく、“意図を分解して渡す相手”と捉えることが大切です。

よくあるNG指示例とその理由

以下のような指示は、ユーザーとしては具体的に伝えているつもりでも、AIにとっては非常に曖昧です。

指示なぜNGか
この文章をもっと良くして「良い」の定義が不明。トーン?情報量?文法?
キャッチーなタイトルにして「キャッチー」の基準は人それぞれ。業界やターゲットによって変わる
丁寧に書いて丁寧の程度や文体の方針が不明確

これらに共通するのは、「評価基準が主観的」であることと、「ゴールが共有されていない」ことです。

ChatGPTは、あなたの思考を読めません。
だからこそ、評価軸・目的・制約条件を“言語化”する習慣が重要です。

ChatGPTが理解しやすい構文ルールとは?

ChatGPTが得意とする構文の共通点は、以下の3つに集約されます。

出力目的が明示されている
→ 例:「初心者向けにブログ構成を作って」

条件や制約がセットになっている
→ 例:「H2を3つ、各H2にはH3を2つずつ含めて」

出力形式が具体的に定義されている
→ 例:「Markdown形式で、見出しのみをコードブロック内に出力」

この3点が揃うと、ChatGPTはまるで“事務処理能力に長けた優秀なアシスタント”のように機能します。
逆にこの構造が欠けると、“優等生だけど質問の意図を勘違いしがちな後輩”になってしまいます。

【ChatGPTが理解しやすい構文フォーマット例】

コピーする編集する目的:◯◯を出力したい  
条件:△△という制約で(トンマナ、構成ルール、文字数など)  
形式:□□形式で出力して(Markdown、表形式など)

このように論理構造を整理して渡すことで、ChatGPTの出力は飛躍的に精度が上がります。


次章では、これらの考え方を“誰でも再現できるテンプレート”として紹介していきます。
「どう指示すればいいか分からない」という方でも使える具体例を交えてお伝えします。

ChatGPTに伝わる「説明の型」テンプレート

「指示の出し方に自信がない」「ChatGPTにうまく伝えられない」と感じている方の多くは、“何をどう伝えればいいか”の型を持っていません。この章では、ChatGPTに情報を正確に届けるための説明テンプレートを3つのステップで整理し、すぐに使える応用例まで紹介します。

テンプレート①:ゴールを明確にする

ChatGPTにとって最も重要なのが「何を出力すればいいか(=アウトプットのゴール)」です。
人間同士なら“察する”こともできますが、AIはゴールが曖昧だと無難な答えに逃げてしまいます。

【悪い例】
「この内容、分かりやすくして」
→ 何がゴールか不明(文章構造?トーン?語彙?)

【良い例】
「中学生にも理解できるように、箇条書きでまとめ直して」
→ 対象読者・表現形式が明確

✅ ChatGPTに伝えるべき「ゴール」の要素

  • 誰のために(対象読者や利用目的)
  • 何を出したいか(形式や内容の種類)
  • 何を達成したいか(読者の行動・理解)

ゴールが定まるだけで、出力のブレは大きく減らせます。

テンプレート②:条件・制約・文脈をセットで伝える

次に重要なのが、前提条件や文脈を明示することです。ChatGPTは人間のように過去のやりとりや行間を“空気”で読めません。

【条件の具体例】

  • 文字数:800文字以内
  • トーン:ビジネス寄り/カジュアル寄り
  • 内容制限:専門用語は使わない など

【文脈の補足例】

  • 「この内容は営業向けの提案資料に使う」
  • 「業界知識がない人でもわかるように」
  • 「〇〇の書籍を読んだ前提で」など

特にプロンプトが長くなりがちな複雑な依頼では、この「文脈セット」が成果の精度を大きく左右します。

テンプレート③:出力形式を具体的に指定する

最後のポイントが「どの形式で出力してほしいか」の指定です。

【NG例】
「ブログの構成を考えて」
→ 構成って何?タイトルだけ?H2まで?本文も?など曖昧

【OK例】
「H2とH3をMarkdown形式で、見出しだけを箇条書きで出力して」
→ 形式が明確=AIが迷わない

✅ ChatGPTが扱いやすい出力指定の例

  • Markdown形式
  • 箇条書き
  • 表形式
  • コードブロック
  • JSONやCSV風の構造化形式

形式を明確にすることで、「これはそのままコピペで使える」という実用的な出力が得られやすくなります。

応用例:ブログ記事・プレゼン構成・コード出力 など

それでは、実際の活用シーンごとにテンプレートを当てはめてみましょう。

ブログ構成を出させたいとき

cssコピーする編集する目的:SEO対策を意識したブログ記事構成を作りたい  
条件:キーワードは「ChatGPT 指示 方法」、読者はマーケティング担当者  
形式:Markdownで、H2とH3を見出しのみ出力

プレゼン資料の流れを考えたいとき

コピーする編集する目的:営業プレゼンの骨子を整理したい  
条件:クライアントは飲食業界、予算意識が強い、提案時間は10分  
形式:スライドごとの要点を箇条書きで出力

コードやツール出力を依頼したいとき

cssコピーする編集する目的:Googleスプレッドシートで使える関数を作りたい  
条件:A列の日付に基づいて、翌月末日を出す  
形式:関数のコードと一言説明を添えて出力

このように「ゴール→条件→形式」の3点セットを押さえるだけで、ChatGPTの出力精度は驚くほど安定します。
伝え方を整えることは、AIとの対話では「操作スキル」ではなく「設計スキル」に近いものです。

次の章では、このテンプレートを実際の“曖昧な指示例”にあてはめて改善していきます。現場ですぐ使える改善前後のビフォーアフターをご紹介します。

ケース別:ChatGPTへの伝え方の改善事例

ChatGPTとのやり取りで「なんか違う」と感じる原因の多くは、“指示の曖昧さ”にあります。この章では、実際によくある依頼パターンを3つ取り上げ、どのように改善すればAIが正確に意図を汲み取れるのか、ビフォーアフターで解説します。

例①:「旅行プランを考えて」→改善後の指示

Before(よくあるNG例):
「夏に関西旅行したいから、プラン考えて」

なぜうまく伝わらない?
→ 行き先、日数、予算、目的(観光/グルメ/体験)などの情報が不足。ChatGPTは「誰向けに」「どの程度の詳細で」プランを出せばよいか判断できません。

After(改善例):

コピーする編集する関西方面で2泊3日の夫婦旅行を計画中です。
✅ 時期:8月上旬  
✅ 目的:涼しい場所で自然を感じたい  
✅ 移動手段:新幹線+電車  
✅ 予算:1人あたり5万円以内  
✅ 出力形式:1日ごとの行程を、朝・昼・夜に分けて表形式で

改善ポイント:

  • 人数、日数、目的、移動条件、予算などの“前提”をセット
  • 出力形式を具体化(表形式・時間帯分け)

これだけで、ChatGPTの提案が「使えるプラン」に化けます。


例②:「ブログ構成を作って」→改善後の指示

Before(よくあるNG例):
「ChatGPTに伝えるコツについて、ブログ構成を考えて」

なぜうまく伝わらない?
→ 読者像、記事の目的、検索キーワード、構成ルールなどが不明。出力される構成が漠然としてしまいます。

After(改善例):

cssコピーする編集するタイトル:「ChatGPTに伝わる指示のコツを解説」  
✅ 想定読者:ビジネスパーソン(マーケ・営業)  
✅ 検索意図:ChatGPTへの指示が通じず困っている人向け  
✅ 目的:SEOで上位を狙いつつ、構造的に説明したい  
✅ 出力形式:Markdown形式で、H2・H3の見出しのみをコードブロック内で出力

改善ポイント:

  • 読者像と検索意図を明示
  • 出力フォーマットを細かく指定(Markdown+構成だけ)

ChatGPTが「どういう粒度で構成を出すか」を迷わなくなります。


例③:「SNS用にキャッチーにして」→改善後の指示

Before(よくあるNG例):
「この文章をSNS用にキャッチーに直して」

なぜうまく伝わらない?
→ SNSの種類(XなのかInstagramなのか)、投稿の目的(告知?誘導?共感?)、ターゲット層が不明。文調の変更も明示されていない。

After(改善例):

コピーする編集するこの文章をX(旧Twitter)向けに加工してください。  
✅ ターゲット:20〜30代の副業・スキルアップ層  
✅ 目的:ブログへの流入を増やす  
✅ 文調:少しカジュアル寄り、絵文字や改行は控えめ  
✅ 文字数:140文字以内  
✅ 出力形式:キャッチコピー1本+本文ツイート1本

改善ポイント:

  • 媒体の特性とターゲットを明示
  • 表現トーンと文字数制約を指定
  • 「どう使うのか」が見える=出力精度が上がる

このように、曖昧な指示を「目的・条件・形式」の3要素に分解して伝えるだけで、ChatGPTは“再現性の高いアウトプットマシン”に変わります。

次の章では、この考え方を支える「説明力」や「思考整理力」を、どのように養えばよいかを掘り下げていきます。

ChatGPTに伝わる人が使っている「思考習慣」とは?

ChatGPTを自在に使いこなしている人たちには、ある共通の“思考パターン”があります。それは専門知識やスキルの問題ではなく、「AIとの対話に適した思考の順番や構造」を自然に身につけている点です。この章では、その習慣を言語化し、再現できる形で整理します。

ChatGPTにとっての「前提」と「目的」を補う力

ChatGPTが苦手とするのは、「目的不明の会話」や「前提の省略」です。
逆にうまく使いこなしている人は、“AIが知らない背景を自分で先に言葉にする”習慣を持っています。

たとえば、

  • 「誰向けに話しているか」
  • 「どんな場面で使うのか」
  • 「何をゴールにしたいのか」

こうした前提が丁寧に整理されていると、ChatGPTは的確な提案や構成、表現を即座に返すようになります。

この力は、言い換えれば「一歩引いて、自分の依頼をメタ認知できる力」とも言えます。
単に“何かを出してほしい”のではなく、「なぜ、それが必要なのか?」という問いを先に投げかけておくのです。

ChatGPTをうまく使う人は、“AIに意図を伝える準備”が自然にできているのが特徴です。

抽象と具体を往復する力がカギ

もう一つの鍵が、抽象と具体の“往復運動”を自分の中でできることです。

たとえば、

  • 「丁寧に」と言うとき、それは「敬語を使う」なのか、「語尾を柔らかくする」なのか
  • 「面白く」と言うとき、それは「例え話を入れる」のか、「ツッコミを入れる」のか

こうした言語の“意味の幅”を、自分で具体に落とし込んでから伝えられるかどうかが分かれ道です。

この力をつけるには、以下の習慣が有効です。

✅ 抽象語を使ったら、自分で1段階具体に置き換えてみる
✅ ChatGPTに指示する前に、自問自答する:「これってどういう意味?」
✅ 他人の出力と自分の意図のズレがあったとき、「どこが曖昧だったか」をメモしておく

ChatGPTとの対話は、自分の言語思考の“型”を磨く訓練にもなります。

ChatGPTと人間の役割分担を理解する

最後に大切なのは、「どこまでAIに任せるか、どこから人間が判断するか」という役割分担の考え方です。

ChatGPTは「思考の整理」「構成の試作」「アイデアのたたき台」などには非常に向いています。
しかし、まだ文脈の繊細なニュアンスや、一貫性のあるトーン設計には課題が残ります。

うまく使いこなしている人は、こうした特性を理解しながら、AIを“素材作りの助手”として使っているのです。

✅ ChatGPTが得意な領域

  • 論理構造を整理する
  • 要素を抜き出す
  • 既存の情報を組み合わせて提案する

✅ 人間が担うべき領域

  • 本質的な意図の設計
  • ニュアンスやトーンの最終調整
  • 判断と選択の意思決定

この“思考の分業”ができると、ChatGPTは単なる便利ツールではなく、構造化思考のパートナーになります。


以上のように、ChatGPTに伝わる人は「意図の言語化力・思考の整理力・分業設計力」の3つを自然に使い分けています。
これは特別なスキルではなく、日々の問いかけや指示の仕方を少し変えるだけで身についていく力です。
AIとのやり取りが増える今後、この思考習慣こそが“本当の差”を生むでしょう。

補足:ChatGPTを使いこなすためのリソース一覧(必要なら)

この記事で基本的な「伝え方の型」は理解できたとしても、実際の現場では「もっと事例がほしい」「応用パターンを見たい」と感じる場面も出てくるでしょう。この章では、そういった“次の一歩”に役立つ実践リソースをピックアップしました。必要に応じて活用してみてください。

プロンプト例サイト

ChatGPTの使い方に悩んだときに参考になる「具体的なプロンプト例」がまとまっているサイトです。
プロンプト設計の引き出しを増やしたいときに便利です。

Prompt Perfect(英語)
→ プロンプトのリライト支援にも対応。GPT活用者向けの高精度ツール。

AIPRM for ChatGPT(Chrome拡張)
→ SEO・セールス・教育・開発などジャンル別のプロンプトテンプレが豊富。

PromptHero(英語)
→ 特に画像生成や創作系プロンプトが強い。ChatGPT用のカテゴリーもあり。

オススメのYouTube解説チャンネル

動画で理解したい方や、実演形式で学びたい方に向いています。特に「どこをどう直せば出力が変わるか」を実例で見たいときに効果的です。

AI時代の仕事術(日本語)
→ ChatGPT活用法をビジネス視点で解説。構成づくりや業務効率化に強い。

Matt Wolfe(英語)
→ 最新のAIツールやプロンプト技術を網羅的に紹介。テック寄り。

Everyday AI(日本語)
→ 初心者向けに丁寧な実演。ブログ、SNS運用、教育分野の応用事例が豊富。

体系的に学べる教材

基礎から学び直したい、またはチームや社内向けに研修的に使いたい方には、以下の教材も有効です。

Udemy:「ChatGPTで仕事効率を10倍にする方法」
→ 実務事例ベースで、指示の工夫や業務改善への落とし込みを丁寧に解説。

Google Cloud Skill Boost:「Introduction to Generative AI」
→ 英語教材ですが、生成AIの構造理解や適用領域をしっかり学べます。

Schoo / BizHint / ferret などのビジネスメディア特集
→ 日本語で継続的にアップデートされている実用系コンテンツが豊富。


こうしたリソースを活用しながら、少しずつ自分なりの「伝え方パターン」を蓄積していけば、ChatGPTは確実に現場の即戦力ツールになってくれます。
大切なのは、魔法の一文を探すよりも、構造と思考の整理力を育てていくことです。