岡山市南倫理法人会副事務長・清水美江さんは、入会5年目にして初めての講話をされました。ご結婚40周年と事業20周年を迎えられた節目に、ご自身の人生を「難を転じる」という視点で語られました。自宅の南天が折れた直後に工場で重大事故寸前の出来事が起こり、「南天が身代わりになった」と感じた不思議な体験。さらに創業当初、元社長の虚偽報告により実際の利益は年間わずか一万五千円と判明し、相手方弁護士から「契約を白紙に戻しますか」と問われた際、常識的には撤退すべき状況であったにもかかわらず、「なぜかいける気がする」と直感を信じて契約を継続しました。その後、数々の困難を乗り越え、事業は発展を続けています。
清水さんの決断の核心は、「なぜかいける」という感覚にありました。この直感を持てるかどうかが、経営や人生を左右します。では、どうすればこの感覚を持てるのでしょうか。
第一に、誠実さの積み重ねです。清水さんは子ども時代から家庭の苦難を背負い、数々の困難に真正面から向き合ってきました。その生き方が、いざという時に「信じて進める直感」を生み出したと考えられます。誠実な努力を重ねているからこそ、自分の判断を信じられるのです。
第二に、苦難を避けない姿勢です。万人幸福の栞には「苦難は幸福の門」とあります。困難を不運と捉えるのではなく、学びと成長の入口として受け止める人だけが、「いける」という確信をつかむことができます。清水さんは苦難を逃げずに受け止め続けたことで、人生を切り拓く「感覚」を磨かれたのだと思います。
第三に、日々の実践が感覚を鍛えます。倫理においては「気づいたらすぐ行う」という行動の積み重ねが大切にされています。小さな一歩を積み重ねることで、自分の判断や直感に対する信頼が増し、「ここぞ」というときに迷わず決断できるのです。
「信成万事」とは、信じれば必ず成るという魔法の言葉ではありません。誠実さ、苦難への姿勢、日々の実践。この三つが備わったとき、人は「いける」と思える直感を持つことができます。清水さんの講話は、そのことを力強く教えてくれました。
ビジネスでも人生でも、すべてをデータや合理性で割り切ることはできません。最後に未来を切り拓くのは「信じ抜く感覚」です。私たちも日々の実践を重ね、「いける」と感じられる自分を育てていきたいと思います。