谷口慎治
谷口慎治

共感を呼ぶコピーは「センス」ではなく「構造」で作れます。AIも使いながら、誰でも再現できる方法をまとめました。目次を見て必要なところから読んでみてください。


なぜ今「共感コピー」に注目が集まっているのか?

従来型のセールスコピーが効かなくなってきた。その理由を数字や現場の変化から整理すると、今の読者やユーザーが「売り込み」よりも「自分とのつながり」を求めていることが見えてきます。ここでは、なぜ今「共感」がキーワードになるのか、背景を冷静に掘り下げていきましょう。

セールスコピーの反応率が落ちている背景

広告のクリック率やコンバージョン率が数年前より下がっているという声は、多くのマーケティング担当者が感じている実感だと思います。
特に、「今だけ」「限定」などのワードが効きにくくなっているというケースが増えました。

これは、情報量の飽和によってユーザーが「これは広告だ」と見抜く力を持つようになったことが一因です。加えて、複数の競合商品を比較してから選ぶ流れが一般化したため、いきなりの訴求では動かなくなっています。

数字で見ても、一般的なディスプレイ広告のCTR(クリック率)は0.1%未満が当たり前になりつつあります。
つまり、「一方的な売り文句」では立ち止まってもらえない時代に入ったということです。

顧客は「売り文句」ではなく「自分ごと」を求めている

今の消費者が求めているのは「この商品、なんかいいかも」ではなく、「これ、まさに私のことじゃん」という“自分ごと化”です。
この違いは小さなようでいて、実際の行動に大きな差を生みます。

例えば、以下のようなコピーがあったとします。

  • A:「忙しいあなたにぴったりの時短ツール」
  • B:「朝の5分、メール整理だけで終わっていませんか?」

前者はありがちな売り文句ですが、後者は具体的な状況に触れることで、読む人の“日常”と接続しようとしています

つまり、今のコピーに求められているのは“共感ベースの接点作り”です。商品の優位性ではなく、「これ、私かも」と思ってもらえる瞬間があるかどうか。その起点が、反応を分けるカギになっています。

AI時代におけるコピーライティングの新常識

ChatGPTや他の生成AIが進化したことで、誰でも「それっぽい文章」は書けるようになりました。
しかし、ここで改めて問うべきは、“それっぽい”と“伝わる”は別物だということです。

AIで生成した文章には、情報はあっても“現場のリアリティ”や“読み手の心理”が入りづらいという課題があります。
特に「共感コピー」においては、ベネフィットと感情の接点をどう設計するかが重要です。

ですから、今の時代に求められるのは、「AIをどう使うか」ではなく、“人間として何をインプットするか”です。
構成や意図、ターゲット像を明確にすることで、AIにも再現性のあるコピーを作らせることが可能になります。

まとめポイント

  • 反応率が落ちているのは、「広告くささ」に対する耐性が上がったから
  • 今の消費者は、「自分に関係ある」と感じた瞬間に動く
  • AI活用のカギは、“人間の視点で文脈を設計する力”

共感コピーが生まれる“3つの条件”

共感コピーを「センスのある言葉選び」だと思っていませんか?実は、構造と要素の掛け算で誰でも作れるスキルです。この章では、共感を呼ぶコピーに共通する「3つの条件」を分解して、商品特徴やベネフィットとどう結びつければいいかを整理していきます。

商品特徴だけでは刺さらない理由

よくある失敗が、「商品の強み=共感ポイント」だと思い込んでしまうことです。

たとえば、こんな訴求を見たことはないでしょうか?

  • 「最新の技術を搭載」
  • 「独自開発の3層構造フィルター」

開発者としては誇らしい特徴かもしれません。でも、読み手にとっては「で?それって私にどう関係あるの?」なんです。

商品特徴(スペックや機能)は、あくまで“事実”であって、“共感”の材料にはなりにくい
共感を生むには、読者が「それ、わかる」と思える感情や状況にまで翻訳する必要があります。

ベネフィットの本質とは何か?

ここで、ベネフィットの定義をもう一度確認しましょう。

ベネフィット=その商品を使った結果として、ユーザーが手に入れる“状態の変化”

つまり、「どうなるか」が語られていない限り、ベネフィットにはなっていません。

特徴:低反発素材
→ ベネフィット:「腰が沈みすぎず、朝起きても腰が痛くない」

特徴:ノンカフェイン
→ ベネフィット:「寝る前に飲んでも、ぐっすり眠れる」

ここでのポイントは、「機能」→「状態変化」への変換です。
そして、この状態変化が“自分ごと”として想像できるかどうかが、共感コピーの要になるんです。

「感情×状況×欲求」を重ねる思考法

では、実際にどうやって共感を設計していくのか?
答えはシンプルで、感情・状況・欲求をセットで考えることです。

要素
感情疲れた、焦っている、うれしい
状況通勤電車、寝る前、会議直前
欲求(本能)楽したい、安心したい、勝ちたい

これらを「掛け合わせる」ことで、読み手は自分の体験に照らして“腑に落ちる”ようになります。

例えば:

「朝の満員電車、誰とも話したくないあの時間に。香りだけは、リゾートにいるみたいだった。」

→ 香り付きイヤホンの訴求だけど、スペックは一切出してません。
“あの感じ”がわかるからこそ、心に残る。これが共感設計です。

まとめポイント

  • 商品特徴だけでは共感は生まれない
  • ベネフィットは「状態の変化」で設計する
  • 感情×状況×欲求の掛け算が「自分ごと」にするカギ

AIでも使える!共感コピーの構成パターン5選

共感コピーは「なんとなくいい感じ」では再現できません。
ここでは、AIにも人にも扱いやすい構成テンプレートを5つに厳選。どれも、商品特徴とベネフィットを整理すれば自然に落とし込める構造です。現場のライターも、生成AIも、迷わず使える「型」を1つずつ見ていきましょう。

パターン①【悩み→共感→解決】型

構造:共感起点で読み手を引き込み、その後に商品を提示する“王道型”

例:

「何をやっても眠れない…。そう感じていた私が、初めて“自然に寝落ち”できた理由とは?」

使いどころ: 不満や悩みが顕在化しているユーザー向け
入力のコツ: 商品が“どんな悩み”を“どう軽くするか”に集中する

パターン②【ビフォー→アフター→ブリッジ】型

構造:「変化の実感」を明確に見せる、感情移動をデザインする型

例:

「かかとのガサガサに悩んでいた私が、今では裸足でも歩きたくなるほどに。たった1週間の変化です。」

使いどころ: 使用後の変化が明確な商品・サービス
入力のコツ: Before・Afterの“状態の違い”を具体的に出すこと

パターン③【ターゲット指名→問題提起→期待】型

構造:「あなたのことですよ」と語りかける、“呼びかけ型”

例:

「30代でキャリアに悩んでいる方へ。今の働き方、そのままでいいですか?―3ヶ月後に笑える転職準備の話。」

使いどころ: ペルソナが明確に定まっているとき
入力のコツ: 「誰に」「何を問うか」「どんな希望を見せるか」

パターン④【現実あるある→裏切り→納得】型

構造:「そうそう、あるある」→「えっ、まさか」→「なるほど!」の流れで印象を残す

例:

「ダイエットって、“続かないのが当たり前”だと思ってた。でも、このアプリだけは違った。」

使いどころ: 常識を覆すプロダクトやユニークな切り口
入力のコツ: 生活の“あるある”→“裏切り”ポイント→“納得する理由”

パターン⑤【数字×感情訴求】型

構造:ファクトで信頼を取り、感情で記憶に残す

例:

「1日15分×10日で、肩こりが“消えた”人が87%。これ、私にも効きました。」

使いどころ: エビデンスや実績がある商品
入力のコツ: 「数字+結果」に「自分ごと感」を添えること


共通ポイント

  • どのパターンも“読み手の状況”と“結果の想像”を結ぶ構造を持っている
  • AIに使わせるなら、事前に「誰に」「どんな変化を起こすか」まで整理して渡すことがカギ
  • 構成パターンに落とし込むと、共感の再現性が格段に上がる

商品特徴とベネフィットを構成パターンに当てはめる方法

「構成パターンはわかった。でも、うちの商品をどう当てはめたらいいかわからない」──これは多くの現場で起きている壁です。
この章では、特徴をベネフィットに変換する実践ワークから、各構成パターンへの落とし込み方、さらに“テンプレっぽく見えない自然な表現”に仕上げるポイントまでを整理していきます。

特徴をベネフィットに変換するワーク

まずは、商品特徴をそのまま書き出すクセをやめるところからスタートです。
ベネフィットは“機能の説明”ではなく、“状態の変化”として描くのが基本

以下のフォーマットで変換ワークをやるのがオススメです:

商品特徴それがあることで…だから、どんな良いことが起きる?(ベネフィット)
自社開発の抗菌素材雑菌の繁殖を抑える毎日洗濯しなくても臭わない安心感
軽量タイプのノートPCかばんに入れてもかさばらない移動中でもストレスなく仕事が進む
専用アプリ連携スマホで状態が見える忙しくても“今必要な行動”がすぐ分かる

ポイント:
“だから何?”を3回くらい自分に問い直してみると、ベネフィットが言語化しやすくなるで。

各構成パターンにどう当てはめるかの手順

特徴とベネフィットが出そろったら、次はそれを「型」に当てはめるだけ。

たとえば、ベネフィットが「忙しい朝でも、サッと1杯で栄養がとれる」だった場合:

  • 【悩み→共感→解決】型 「朝ごはん、食べなきゃと思ってるのに手が回らない。そんなあなたに、1分で完了する栄養チャージ。」
  • 【ビフォー→アフター→ブリッジ】型 「朝はコーヒーだけだった私が、今はたった1分で“食べた安心感”を得られている理由。」
  • 【現実あるある→裏切り→納得】型 「朝食って、準備が面倒。そう思ってた。でもコレ、混ぜて飲むだけだった。」

ポイント:
商品ではなく、“ベネフィットが主語”になる構文を意識すること
それが、共感設計の第一歩やで。

テンプレではなく“自分の言葉”に落とす工夫

「型に当てはめると、いかにもコピーっぽくなる…」という声、よくあります。
それを避けるには“読み手の声で語る”ことが大事。

次の3つの観点で“自分の言葉”に寄せていこう:

  1. 体感語を使う:「スッと」「ちゃんと」「じわじわ」「ほっと」など感覚で伝える語彙
  2. 口語に崩す:「〜でした」→「〜だった」「〜なんです」などの自然な語尾
  3. 疑問・つぶやき文で始める:「これ、私だけ?」「なんで毎朝こんなにバタバタなんだろ」

例:

  • テンプレっぽい: 「このプロテインは、わずか30秒で栄養補給が可能です」
  • 自分の言葉に落とした例: 「たった30秒で“もう大丈夫”って思える朝ごはん、これ以外に知らない。」

ポイント:
“自分が誰に話しかけているか”を思い浮かべて書くと、自然な文体になりやすいで!


まとめポイント

  • 特徴→ベネフィットの変換は、「状態の変化」ベースで行う
  • 各パターンはベネフィットが主語になる形で当てはめる
  • 型に頼りすぎず、読み手のリアルな声で語り直す

AIツールを活用した共感コピーの実践ステップ

ChatGPTのようなAIツールは、構成パターンと素材さえ整えば“共感コピー製造マシン”になります。ただし、出力される文章はあくまでインプット次第。この章では、「何をどう入力すれば再現性あるコピーになるか」「出てきた文章をどう整えるか」を具体例で整理します。

ChatGPTなどでのプロンプト例

まずは、共感コピーを出すための基本プロンプト。
以下の構文で、構成パターンに沿ったコピー生成を依頼できます。

plaintextコピーする編集する以下の情報をもとに、【悩み→共感→解決】型の共感コピーを3パターン作ってください。

■特徴:低反発のウレタン素材を使用  
■ベネフィット:寝返りしても腰が沈まず、朝まで快適に眠れる  
■ターゲット:40代女性。腰痛持ち。寝起きに体が重いのが悩み

ポイント:
「特徴」「ベネフィット」「ターゲット」を明示し、どの構成パターンで書いてほしいか指定すること。
構造が明確だと、出力の質が一気に上がるで。

入力すべき情報の整理術(特徴・ベネフィット・ターゲット)

AIに入れる情報は、感覚じゃなくて構造的に整理することが重要です。

項目入れるべき情報例
特徴素材・設計・機能など“スペック”寄りの事実
ベネフィット状態の変化、実感、感情への波及(例:朝までグッスリ眠れる安心感)
ターゲット年齢・性別・課題・生活シーン・価値観(例:40代/腰痛/日々疲れ気味)

また、「どんな状況で使うのか?」まで入れておくと、AIの共感精度はグッと上がります。

plaintextコピーする編集する■利用シーン:夜中に何度も目が覚めてしまうことに悩んでいる人向け

実際の生成結果とその改善ポイント

では、さっきのプロンプトにChatGPTが返してくる文章を一例とし、
“そのまま使えるか?どう直すか?”の視点で見てみましょう。

生成結果例:

「朝起きるたびに、腰の痛みでため息…。そんなあなたに、低反発ウレタンが快眠をサポート。寝返りもラクに、朝までぐっすり。」

改善ポイント:

  • 「低反発ウレタンが快眠をサポート」←やや広告っぽく不自然
  • 「あなたに〜を」構文が多用されがち → 会話文調へシフトすると◎

改善例:

「朝起きて、腰が痛いって思うのが日常だった。でもこれ、寝返りしても沈まないから…気づいたら朝まで一度も起きなかった。」

調整のコツ:

  • 主語を“私”や“誰か”に変えて語らせると、共感の距離が縮まる
  • “してもらう”→“自分が感じた”に語り直すと自然
  • 一文一文を“口に出して読んで違和感がないか”チェックするのが地味に効く

まとめポイント

  • 共感コピー生成には「構成パターンの指定」と「3情報(特徴・ベネフィット・ターゲット)」の明示が必須
  • AIが出してくる文章は“素案”。語尾・視点・温度感を調整して自分の言葉にする
  • 構造と設計ができれば、ChatGPTは共感コピーの強力な味方になる

よくある失敗とその対策

構成パターンやAI活用がわかってきたら、あとは「やらかさないこと」が重要になります。
この章では、共感コピーでありがちな失敗を3つの視点から掘り下げ、それぞれにどう立て直すかを整理します。

コピーが「商品説明」になってしまう理由

まず最も多いのがこれ。
「共感コピー」と思って書いたのに、気づいたら“ただの説明”になっているパターン。

例:

「このバッグは、軽量かつ防水。収納力もあり、ビジネスでもプライベートでも使えます。」

これ、悪くはないんやけど、“情報の列挙”になってて、読み手の感情に一切触れてないのが問題。

対策のヒント:

  • “主語が商品”になってないか確認する
     →「このバッグは」ではなく「朝、子どもを送り出して出社するあなたに」など“使う人”から始める
  • スペックは背景でいい。前面に出すのは“変化の実感”
     →「突然の雨でも慌てない。そんな余裕をくれたのがこのバッグでした」

共感が生まれない3つのパターン

共感を狙っているのに、「なんか響かない」というときは、設計のどこかでズレている可能性が高いです。
以下の3つは共感コピーが失敗する典型パターン。

パターン具体例対策ポイント
① 抽象的すぎる「安心して使える」「未来が広がる」など“どんな状況でどう感じたか”まで具体化
② ターゲットがボヤけてる「すべての人にオススメ」誰に刺さるか、絞り込んで書く
③ 感情に触れていない「便利です」「役立ちます」“どう困ってたか→どう救われたか”を書く

対策の鉄則:
“なんの話をしているか”ではなく、“誰の気持ちに寄り添っているか”で読み直すのがコツ。

ベネフィットがズレているときの見直し方

「機能→変化」を言語化できていたとしても、ターゲットの“真の欲求”とズレていたら刺さらない
特に多いのが、「表面的なメリット止まり」で終わってるパターン。

例:

「このアプリなら、支出が自動で管理できます」

→で?何がうれしいの? ってなるやつ。

深掘りチェック法:

  • “だから?”を3回繰り返す
     → 自動で管理できる → 記録の手間がない → 面倒が減る → 続けられる安心感がある
  • ベネフィットを“行動”じゃなく“気持ち”まで落とし込む

修正後の例:

「家計簿、気合い入れて始めても3日坊主。でもこのアプリ、勝手に記録してくれるから…気づいたら3ヶ月、続いてた。」


まとめポイント

  • 商品説明に戻ってしまうのは、“主語が商品”になっているから
  • 共感が生まれないのは、「抽象・ターゲットのブレ・感情不足」が主因
  • ベネフィットがズレてる時は、“だから?”を3回問うて再構成